独占業務とは?
独占業務というものを聞いたことがあるけど、よくわからないという方もいらっしゃると思います。
そういった方に向けて、こちらの記事で簡単に解説をしていきたいと思います。
目次
独占業務とは?
世の中には、数々の業務独占資格というものがあり、その資格を持っていないと該当する業務はできないこととされています。
この独占している業務内容を、「独占業務」と言ったりします。
私たち行政書士を含む8士業は全て業務独占資格でして、各々独占業務を持っています。
(10士業の場合、独占業務が無い士業もあります。)
もちろん、8士業は、その資格が無ければ、その名称を用いることも許されていません。
ちなみに余談ですが、独占業務についての解説ですので、あまり関係のない話ではありますが、業務独占資格と名称独占資格という区分けもありまして、名称独占資格は、業務独占はしていないものの、その資格を持っていないと、その名称を用いてはいけない、というものです。
名称独占資格は、わかりやすいところですと、調理師とかがそうですね。
調理師じゃないと調理をしてはいけない、というわけではないですよね。
こちらの見分け方ですが、各業種の業法に記載されていると思います。
少なくとも、8士業に関しては、各士業法に条文に記載されています。
独占業務の範囲
私たち行政書士も士業と呼ばれるものですので、士業に焦点を当てますが、各士業の独占業務を含めた業務の範囲には様々な問題があるため、きっちりと区分けしてお伝えすることは困難です。
その理由やざっくりとした説明は別記事でまとめます。
独占業務の種類
こちらは細かい話になりますが、この独占業務は、有償独占業務、無償独占業務という区分けをされます。
業務において重要かどうかは別として、軽く説明をさせていただきます。
有償独占業務とは
有償独占業務とは、資格を持っていない者は「有償で」その業務を行ってはいけない、というものです。
無償独占業務とは
無償独占業務とは、資格を持っていない者は「無償であっても」その業務を行ってはいけない、というものです。
有償独占業務、無償独占業務の見分け方
では、この有償独占業務、無償独占業務はどのようにしたら見分けられるのでしょうか?
少なくとも、8士業に関しては、各士業法に条文に限定している内容が書いてありますので、それを見ればどちらかがわかります。
条文上に、「報酬を得て」といったような文言が入っていれば、有償独占業務となります。
8士業の各士業法の条文から分けると以下のようになりました。
独占業務の区分け | 士業名 | 条文 |
---|---|---|
有償独占業務 | 弁護士 | 弁護士法 第72条 |
弁理士 | 弁理士法 第75条 | |
社会保険労務士 | 社会保険労務士法 第27条 | |
行政書士 | 行政書士法 第1条の2 第1項、第19条 第1項 | |
無償独占業務 | 司法書士 | 司法書士法 第73条 第1項 |
税理士 | 税理士法 第52条 | |
土地家屋調査士 | 土地家屋調査士法 第68条 第1項 | |
海事代理士 | 海事代理士法 第17条 第1項 |
無償独占業務の強い制限
無償独占業務は、勝手にその業務を行われると危険だったり、問題があると判断されている、と考えるとわかりやすいです。
士業で説明すると、とてもわかりづらいので、別の例を挙げさせていただきますが、わかりやすい例で言いますと、医師の業務も無償独占業務です。
無資格で勝手に処置をされたら危ないですよね。
このため、無償独占業務は、全く無償であっても、資格を持っていない方は、その対応することができない、とされているのです。
今行っている事業で気になる方は、一度見直してみてください。
業務において有償、無償の差は気にするべきか?
最初に記載したとおりですが、こと業務の場で考えると、受任する側、依頼する側のどちらであっても、この有償独占業務か無償独占業務かという区分けをそれほど気にするべきことなのかは微妙なところです。
各立場での例を挙げてみます。
受任する側の立場の場合
受任する側の立場の場合で、例えば、有償独占業務であることを回避するために、有償独占業務に該当している個別の作業等に対してのみ無償で対応したとしても、業務全体として対価もらう、ということであれば、報酬を得ている判断され、違法となってしまいます。
無償独占業務の強い制限に目が行きがちですが、有償独占業務もそれほど緩い制限というわけではないのです。
対価を一切得ずに対応する、ということは、そもそも業務とも言えないと思いますので、有償独占業務か無償独占業務かはあまり気にせず、独占業務とされている業務は、必要とされる資格を持っていない場合は行ってはいけない、と捉えておいた方が無難です。
依頼する側の立場の場合
依頼する側の立場の場合でも、例えば、受任する側が士業だったとして、他の士業の業務を無償で対応し、有償独占業務であることを回避するという場合、その士業法で課されている守秘義務等も適用されませんし、その士業が加入している損害賠償保険も使えないということとなり、依頼する側のリスクがとても高くなります。
受任する側が士業でない場合は、そもそも上記守秘義務もありませんし、損害賠償保険もありません。
こちらも、有償独占業務か無償独占業務かはあまり気にせず、独占業務とされている業務は、必要とされる資格を持っていない者へ依頼してはいけない、と捉えておいた方が無難です。
まとめ
内容をまとめると以下となります。
・業務独占資格というものがあり、その資格を持っていないとできない業務の内容を「独占業務」という。
・有償独占業務と無償独占業務という区分けがあり、無償独占業務はとても強い制限がある。
・こと業務の場においては、有償無償の区分けは気にせず、無資格者が独占業務の依頼を受けるべきではなく、無資格者へ独占業務の依頼をすべきではない。
以上が、独占業務についての簡単な説明でした。
業務独占資格というものは多数あります。
曖昧なものもあり、すべてを依頼者ご自身が把握することは困難かもしれませんが、困難だから仕方ない、ということでもなく、違法業者との取引だけは避けないといけないことには変わりはありません。
違法にならないように対応をしている取引先と信頼関係を築いて、少しずつ信頼できる取引先を増やしていくことが望ましいですね。
とはいえ、それだけではなく、ご自身が損害を受けないように、予防として契約書に盛り込んでおくということも忘れずに行っておきましょう。
この記事が、少しでも皆様のご参考になれば幸いです。