補助金、助成金、給付金申請の各種手続き代行やサポートの依頼先は?

補助金、助成金、給付金の申請でわからないことがあったり、煩わしかったりするということで、各種手続きの代行やサポートをどこかに依頼したい、と考える方も多くいらっしゃると思います。

この各種手続きの代行やサポートの依頼先ですが、誰に依頼してもいいのでは?と考える方もいらっしゃるかと思います。

しかし、実はそういうわけにはいきません。

少しややこしい内容ですが、こちらの記事で解説をしていきたいと思います。

依頼先の区分けについて

依頼先の区分けですが、補助金という名称だからこの依頼先、助成金という名称だからこの依頼先、というような区分けができるものではなく、実は、その制度が基づく法令、提出先、書類やデータの内容によって依頼できる先が区分けされます。

区分けは下記のとおりです。

1.労働社会保険諸法令(社会保険労務士法 別表第一に記載されている法令)に基づいた書類(データを含む。以下同じ。)の作成や手続き

・・・社会保険労務士しか受任することが出来ません。
(社会保険労務士法 第2条 第1項 第1号、第1の2号)

上記に該当しているのにも関わらず、社会保険労務士以外が対応した場合は違法となり、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科せられます。
(社会保険労務士法 第27条、第32条の2)

2.官公署に提出する書類、その他権利義務又は事実証明に関する書類の作成(行政書士法以外の法律において制限されているものを除く。)

・・・行政書士しか受任することが出来ません。
(行政書士法 第1条の2 第1項、第2項)

上記に該当しているのにも関わらず、行政書士以外が対応した場合は違法となり、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科せられます。
(行政書士法 第19条 第1項、第21条 第2項)

3.上記1.2.に該当しないもの

・・・どの業者に依頼しても問題ありません。

但し、上記は全て代行等を認めている制度で、且つ、代行やサポート先を限定していない制度の場合、という一般的な話です。

ちなみに、弁護士であれば上記を無視して全て対応することができます。(普通は対応しないと思いますが・・・。)

以上を踏まえて、申請する補助金、助成金、給付金の制度をしっかりと理解したうえで、依頼をしなければいけないのです。

違法業者への依頼を避けるには、労働社会保険諸法令に基づく書類の作成や手続きの場合は「社会保険労務士」に、それ以外で官公署に提出する書類の作成を依頼する場合は「行政書士」に依頼しておけば問題はないです。

簡単な区分けの目安

上記にまとめていますが、調べるのが大変、と思われる方も多いかもしれません。

そんな方のために、ざっくりとした区分けの目安をご紹介します。

労働社会保険諸法令に基づいた書類となると、厚生労働省管轄の助成金や給付金の多くが該当します。

上記以外の官公署に提出する書類となると、補助金、上記以外の助成金や給付金で該当するものもあります。

これを踏まえると、厚生労働省管轄の助成金や給付金は「社会保険労務士」、その他は「行政書士」となります。

簡単な区分けすら面倒くさい場合

上記の簡単な区分けでも面倒くさい、という方は、信頼できる行政書士が身近にいるのであれば、行政書士は隣接士業の独占業務に気を付けている方が多いはずですので、そちらに依頼すれば、たとえ依頼先が間違っていたとしても、対応ができるかどうかを含めて話をしてくれるのではないかな、と思います。

簡単な区分けのとおりに依頼ができない場合の考え方

上記までに記載した内容は、「違法業者に依頼をしないように」という点に重きを置いて、社会保険労務士に依頼すべきもの以外は行政書士に依頼をしておけばいい、という少し乱暴な内容にしています。

しかし、そうもいかない場合もあると思います。

例えば、補助金を利用しようとしている購入品の販売店から補助金代行専門業者などを紹介され、そこを利用してほしい、と言われた場合など、場合によっては断りづらいときもあるかもしれません。

そんな時は、社会保険労務士と行政書士の独占業務について、しっかりと理解しておけば、違法業者との取引を回避できます。

独占業務自体の説明は、別記事でまとめていますので、ご興味がございましたら下記からご覧ください。

  独占業務とは?

社会保険労務士の独占業務について

社会保険労務士の独占業務は、上記の依頼先の区分けについての1.に記載した書類の「作成」と「手続き」が独占業務です。

条文上では、「相談」については、条文上は独占業務とされていません。
(社会保険労務士法 第2条 第1項 第1号から第2号、第27条)

「相談」だけしたい、ということであれば、社会保険労務士以外でもいいと考えられます。

しかし、「作業等も含めて、できるだけサポートしてほしい」という場合は、社会保険労務士に依頼することをご検討されたほうがいいです。

行政書士の独占業務について(実務作業)

行政書士の独占業務は、ややこしい書き方をしており、理解しづらいです。

全てをご説明するとかなりの量となってしまうので、ここでは行政書士の独占業務について、補助金、助成金、給付金に関連した内容を手短にご説明したいと思います。

とりあえず、行政書士の独占業務は、上記の依頼先の区分けについての2.に記載した書類の「作成」だけです。
(行政書士法 第1条の2 第1項、第2項、第19条 第1項)

手続きの代行や相談を受けることも行政書士の業務ではありますが、非独占業務ですので、どなたが行っても問題はありません。

補助金申請などですと、中小企業診断士や税理士などもそうですが、それ以外でも得意とされている業者も数多くいらっしゃると思います。

このような方々に依頼をすることとなったとき、その方が行政書士登録をされていない場合は、書類作成は依頼はできないものと捉えて、それ以外のサポートを依頼することとなる、と認識したうえで依頼をしていただければ、問題はありません。

しかし、「作業等も含めて、できるだけサポートしてほしい」という場合は、行政書士に依頼することをご検討されたほうがいいです。

行政書士の独占業務について(官公署)

細かい話をすると、「「官公署」って何?」という話になるかもしれません。

この「官公署」には、少なくとも「国または地方公共団体の諸機関」が該当することは間違いありませんが、こちらの範囲については様々な解釈があるようですので、あまりここには突っ込まずに、国または地方公共団体の諸機関っぽいところに提出する「書類を作成するかしないか」というところで判断しておいた無難かと思います。

国または地方公共団体の諸機関が窓口ではなく、委託先などが窓口となっている場合などでも、代行等は行政書士のみと明言されているものもあります。

行政書士の独占業務について(権利義務又は事実証明に関する書類)

さらに細かい話をすると、「「権利義務又は事実証明に関する書類」って何?」という話になるかもしれません。

権利義務に関する書類の例を挙げると、契約書、約款、協議書、議事録や会議資料、定款などです。

事実証明に関する書類の例を挙げると、各種証明書、財務諸表、図面類、許可申請・届出書の添付書類などです。

上記だけを見てもピンとこないかもしれませんが、こと補助金等の申請だけで考えると、添付すべき書類が元々揃っていれば、気にしなくてもいい話です。

しかし、そこから作成しないといけない、それも含めて依頼をしたい、という場合には、こちらについても気にしなければいけません。

そうなると、他士業法で制限を受けているものは他士業に依頼しないといけませんし、その場合の簡単な区分けなどはできませんので、区分け自体から行政書士に依頼してしまった方が手っ取り早いと思います。

サポート業者それぞれのメリット、デメリット

サポート業者を選ぶ場合のそれぞれのメリット、デメリットを思いついたままに挙げてみました。

申請する補助金等に該当する独占業務が扱えるサポート業者を選ぶ場合

メリット

1.違法業者との付き合いを回避することが出来る。

・・・これは上記までに記載した通りです。

2.提出先にしっかりと確認を取ることが出来る。

・・・違法ではないため、後ろめたいこともなく、確認ができます。

3.実務作業を可能な限り依頼できる。

・・・違法ではないため、後ろめたいこともなく、依頼ができます。

4.最終的な実務が行えることから発言に重みがある。

・・・最終的に実務を行わない方の意見は、あまり参考にならないですし、理想論になりがちです。

実務に基づく意見というものは、何ものにも代えがたいということです。

デメリット

1.不慣れな場合、業務の遂行が遅くなる。

・・・補助金等については、常に制度や手続きなどが更新されていきます。

申請受付開始当初はどの依頼先であっても不慣れなのは同じです。

これは事業規模の話ですが、依頼先の事業規模が大きければ、情報共有を繰り返して、不慣れな期間は少なくできると思います。

士業は、大きな士業法人もありますが、小さな事務所も多く、事業規模が大きい専門業者と比べると分が悪いという場合もあります。

とはいえ、わからないところがあったとしても、メリットの2.で記載したとおり、提出先に確認して解決していくため、最初は遅かったとしても、しっかりと確認して進めているのであれば、安心していいとは思います。

申請する補助金等に該当する独占業務が扱えないサポート業者を選ぶ場合

メリット

1.業務に実績があり、専門特化している業者の場合は、安定した業務の質が見込める。

・・・申請する補助金等に該当する独占業務が扱えるサポート業者を選ぶ場合のデメリットの1.に記載したとおり、常に制度や手続きなどが更新されていきますので、今までの実績があればそれでだけいい、というわけでもありませんが、事業規模が大きい専門業者であれば、安定した質が見込めると思います。

2.他の業務に対するサポートも受けられるかもしれない。

・・・独占業務が行えない業者の場合は、その他の事業がメインであることも多いかもしれません。
その場合は、メイン事業のサポート等を受けられるかもしれません。

デメリット

1.違法な対応をしていないか注意が必要。

・・・知らなかったでは済まされませんので、気にしておかないといけません。

2.違法な対応をしていない場合、独占業務の部分をご自身で行うこととなる場合もある。

・・・依頼先によっては提携先に依頼するかもしれませんが、ご自身で行うこととなる場合もあります。

3.サポート業者が士業でない場合は、秘密保持をしてもらえるか確認が必要。

・・・士業であれば、業務範囲内であれば守秘義務があるため、特に問題はありませんが、そうではない業者の場合は、秘密保持契約などをしたほうが安全です。

4.サポート業者が士業でない場合は、その業務により自社が損害を被った場合に、損害賠償を受けられるか確認が必要。

・・・士業であれば、その業務が損害賠償保険の対象となる場合は、保険が適用されますが、そうではない業者の場合は、しっかりと事前に確認をしておいたほうが安全です。

5.最終的な実務が行えることによる重みのある意見はもらえないかもしれない。

・・・これはどうしようもないかもしれません。

サポート業者それぞれのメリット、デメリットのまとめ

メリットやデメリットを表でまとめると以下のとおりです。

サポート業者メリットデメリット
申請する補助金等に該当する
独占業務が扱えるサポート業者
・違法業者との付き合いを回避することが出来る。
・提出先にしっかりと確認を取ることが出来る。
・実務作業を可能な限り依頼できる。
・最終的な実務が行えることから発言に重みがある。
・不慣れな場合、業務の遂行が遅くなる。
申請する補助金等に該当する
独占業務が扱えないサポート業者
・業務に実績があり、専門特化している業者の場合は、安定した業務の質が見込める。
・他の業務に対するサポートも受けられるかもしれない。
・違法な対応をしていないか注意が必要。
・違法な対応をしていない場合、独占業務の部分をご自身で行うこととなる場合もある。
・士業でない場合は、秘密保持をしてもらえるか確認が必要。
・サポート業者が士業でない場合は、その業務により自社が損害を被った場合に、損害賠償を受けられるか確認が必要。
・最終的な実務が行えることによる重みのある意見はもらえないかもしれない。

メリットやデメリットはそれぞれにありますので、ご自身が希望するサポート内容に合わせて選定していただくことが重要です。

デメリットは回避できるものもありますが、回避することでは依頼する意味がない、ということであれば、別のサポート業者を選んだほうがいいかもしれません。

まとめ

上記をまとめると以下のとおりです。

・違法業者に依頼しないようにするには、社会保険労務士法と行政書士法の内容を理解すればいい。

・違法業者に依頼をしないということだけを重点に置いて簡単に分けるなら、厚生労働省管轄の助成金や給付金は「社会保険労務士」、その他は「行政書士」。

・違法業者でないサポート業者には、それぞれにメリットとデメリットがあるので、ご自身が希望するサポート内容に合わせて選定していただくことが重要。

以上が、補助金、助成金、給付金申請の各種手続き代行やサポートの依頼先についての解説でした。

補助金・助成金・給付金などの申請手続きは、簡単なものもありますが、複雑でとても時間がかかってしまうものも多くあります。

暇だということであればご自身で行っていただくということでも問題はありませんが、申請手続きを行うことで本業に手がつけられない、というのは本末転倒です。

そんなことはサポート業者を頼って、絶対に本業に専念されるべきです。

もちろん、補助金などであれば、事業計画などもありますので、完全に丸投げなどができるものではありませんが、サポートがあるとないでは、申請にかかる時間が大きく違います。

正直なところ、暇だということでも、サポート業者に依頼して、その時間をご自身の研鑽に時間に充てたほうが、よほど有意義なような気もします。

時間は何ものにも代え難いです。

このようなことをサポート業者に依頼するという投資ができる方が、最終的には他の人よりも一歩先に進めるのだと思います。

また、サポート業者については、違法業者と付き合いを始めてしてしまうと、つけ込まれたり、後々面倒なことになる可能性が非常に高いです。

他社や取引先から、違法業者と同様にモラルが低いと思われてしまう可能性もあります。

非常にややこしいところにはなりますが、よく理解して、少なくとも違法業者には決して依頼をしないようにご注意ください。

代行業者は色々ありますが、実績や事業規模だけで判断せずに、相手をよく見て、信頼できそうだと思った人に依頼していただき、少しずつ信頼関係を築いていっていただけると嬉しいです。

いくら実績があったり、事業規模が大きくても、相手が嫌な人だったり、全く合わない人だったら、ストレスばかりたまってしまいますからね。

健全な精神状態を保つために、何事も気分よく進めたいですよね。

長文となりましたが、こちらの記事が、少しでも皆様の補助金、助成金、給付金申請等の参考になりましたら幸いです。