義務と努力義務の違いとは?
「義務」や「努力義務」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。
こちらの言葉の意味について、しっかりと理解されているでしょうか?
こちらのブログでも色々なことを解説しているのですが、急に「義務」や「努力義務」などの表現をしてしまうと、内容がよく分からなくなってしまうため、こちらについて解説をしておこうと思います。
まず、「義務」と「努力義務」と同じ義務という言葉を使われていますが、この二つはどういった違いがあるのでしょうか?
また、よく法令で、あることを「義務」とされていたり、またあることを「努力義務」とされていたりするのですが、条文上にそのような文言はありません。
一体どうやって見分ければいいのでしょうか?
さらに、違反した場合の罰則はあるのでしょうか?
これらについて解説していきたいと思います。
義務とは?
こちらはそのままですが、あることを「しなければならない」、もしくは、「してはならない」とされていることです。
強制的なものですね。
義務の見分け方は?
法令の条文で、「しなければならない」、もしくは、「してはならない」といったような表現がされています。
これだけではわかりづらいので、具体的な例を挙げて説明していきます。
身近なほうがわかりやすいと思うので、自動車の初心者マークを例としてみます。
読みづらいですが、まず道路交通法 第71条の5 第2項を以下に記載します。
第七十一条の五
2 第八十四条第三項の準中型自動車免許又は普通自動車免許を受けた者で、当該準中型自動車免許又は普通自動車免許を受けていた期間(当該免許の効力が停止されていた期間を除く。)が通算して一年に達しないもの(当該免許を受けた日前六月以内に準中型自動車免許又は普通自動車免許を受けていたことがある者、現に受けている準中型自動車免許又は普通自動車免許を受けた日以後に当該免許に係る上位免許(第八十五条第二項の規定により一の種類の運転免許について同条第一項の表の区分に従い運転することができる自動車等(以下「免許自動車等」という。)を運転することができる他の種類の運転免許(第八十四条第二項の仮運転免許を除く。)をいう。第百条の二第一項第一号及び第三号において同じ。)を受けた者その他の者で政令で定めるものを除く。)は、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない。
要約すると、準中型自動車免許又は普通自動車免許を受けて一年未満の方は、初心者マーク付けないで普通自動車を運転してはならない、と書かれています。
初心者マークを付けないで運転「してはならない」ということで、こちらは義務です。
上記の条文上でも、「してはならない」と表現されていると思います。
ちなみに余談ですが、あることを「しなければならない」という義務を作為義務、「してはならない」という義務を不作為義務といったりもします。
義務を守らなかった場合の罰則は?
義務を守らなかった場合は、罰則があることが多いです。
「多い」と表現したとおり、罰則のない義務もあります。
上記の初心者マークを付けないで運転した場合については、二万円以下の罰金又は科料などの罰則があります。(道路交通法 第121条 第1項 第9の3号)
ちなみに、「わざと」初心者マークを付けないで運転した人だけでなく、忘れていたなどの不注意で初心者マークを付けないで運転した人も罰則がある、とも書かれています。(道路交通法 第121条 第2項)
努力義務とは?
努力義務とは、あることをするように、もしくは、しないように「努め」「なければならない」というように、「努力」する「義務」があるとされていることです。
ということで、逆に考えると、「努力」は「しなければいけない」とされていますが、実際にその行為等を「しなければいけない」とされているわけでも、「してはならない」とされているわけでもないのです。
努力義務の見分け方は?
法令の条文で、「するように努めなければならない」や「しないように努めなければならない」といったような表現がされています。
こちらは、上記とは逆(?)で、高齢者マーク(もみじマーク・四つ葉マーク)を例とします。
こちらでも、まず道路交通法 第71条の5 第4項を以下に記載します。
第七十一条の五
4 普通自動車対応免許を受けた者で七十歳以上七十五歳未満のものは、加齢に伴つて生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるときは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けて普通自動車を運転するように努めなければならない。
こちらは第2項と比べると、かなり読みやすいですが、同じように要約すると、普通自動車免許を持っている70歳以上75歳未満の方で、加齢によって運転に影響を及ぼすおそれがあるときは、高齢者マークを付けて普通自動車を運転するように「努めなければならない」となっています。
「努めなければならない」ということで、こちらは努力義務です。
上記の条文上でも、「努めなければならない」と表現されていると思います。
努力義務を守らなかった場合の罰則は?
努力義務については、実際にその行為等を「しなければいけない」や「してはならない」とされているわけではないため、守らなかった場合の罰則はありません。
では、罰則がないからといって、努力義務として規定されているものは、無視しても全く問題ないということなのでしょうか?
上記の高齢者マークの場合で考えてみます。
高齢者マークを付けた普通自動車に対して、幅寄せや割込みをした場合、その自動車運転者に対して五万円以下の罰金などの罰則があります。(道路交通法 第71条 第1項 第5の4号)
この時点で、高齢者マークを付けておいた方が、安全ですよね。
さらに、上記のような場合で、事故が起きたのであれば、高齢者マークを付けているかどうかで、過失割合にも影響が出たりもするでしょう。
上記のとおり、努力義務を守らなかったとしても罰則自体はありませんが、努力義務規定を無視しても全く問題ないというわけではないです。
まとめ
内容をまとめると以下となります。
・義務とは、あることを「しなければならない」、もしくは、「してはならない」とされているもの。
努力義務とは、あることをするように、もしくは、しないように「努め」「なければならない」とされているもの。その行為等を「しなければいけない」わけでも、「してはならない」というわけではない。
・義務は、法令の条文で、「しなければならない」、もしくは、「してはならない」といったような表現がされている。
努力義務は、法令の条文で、「するように努めなければならない」や「しないように努めなければならない」といったような表現がされている。
・義務は、守らなかった場合の罰則があることが多い。
努力義務は、守らなかった場合の罰則はない。しかし、無視しても全く問題ないというわけでもない。
以上が、義務と努力義務の違いについての解説でした。
色々なサイトの解説などで、急に「義務」や「努力義務」が出てきてよくわからなくなった、という場合には、もう一度こちらを読んでご理解を深めていただけますと幸いです。