犬と猫のマイクロチップ情報登録制度とは?
犬と猫のマイクロチップ情報登録制度いうものをご存じでしょうか?
動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護管理法)に規定されている”犬と猫へのマイクロチップの装着と登録の義務化”が令和4年6月1日から始まりました。
こちらの登録制度のことなのですが、この犬と猫のマイクロチップ情報登録制度の目的や概要はどういったものでしょうか?
装着と登録の義務化とありますが、どんなケースでも義務とされているのでしょうか?
こちらについて解説していきたいと思います。
目次
マイクロチップ情報登録制度の目的
なぜこのような制度が出来たのか、必要性がわからない、と思われる方もいらっしゃると思います。
ということで、目的を確認してみましょう。
この制度の目的は、様々あると思いますが、身近なところでは以下のものが挙げられます。
1.犬や猫が迷子になったり、災害や事故等で離ればなれになったときに、所有者のもとへ戻る確率を高める。
2.所有者を特定できることで、犬や猫を安易に捨てるなどの行為を抑止する。
上記の1.は、所有者のメリットとして一番大きいものだと思います。
上記の2.は、動物虐待の抑止です。
尚、動物虐待の罰則についても、2019年の法改正により厳罰化されています。
(動物愛護管理法 第44条)
これらの問題を解決するために、このマイクロチップ情報登録制度が出来た、ということですね。
マイクロチップ情報登録制度の概要
目的がわかったところで、実際に何をするものなのか、制度の概要について説明します。
この制度は、犬や猫にマイクロチップを装着し、装着したマイクロチップに記録されている識別番号と、所有者や犬や猫の情報を、指定登録機関で管理しているデータベースに登録する、というものです。
上記を行うことにより、例えば、犬や猫が所有者不明で、動物愛護管理センターや保健所などに引き取りを求められたとき、動物愛護管理センターや保健所などで、その犬や猫のマイクロチップの情報を読み取って、データベースと照合をすることにより、所有者が特定することが出来て返還できる、というわけですね。
さらに、動物愛護管理センターや保健所などの引き取り数が減れば、結果的に殺処分の数も減少する、ということにも期待できます。
たまたま所有者不明の犬や猫を見つけた方は、殺処分のことを考えて、動物愛護管理センターや保健所などに引き取りを求めることをためらう方もいると思います。
装着と登録がされていれば、所有者に返すという感覚で、動物愛護管理センターや保健所に連れていくことができます。
こういった面も考慮していただき、努力義務や任意となっている場合にも、積極的に装着と登録を行っていただけるといいな、とは思います。
マイクロチップ情報登録の具体的な流れについては、別で記事を作成します。
マイクロチップ情報登録制度では、何が義務化されている?
装着と登録の義務化とありますので、何らかのことが義務化されているわけですが、どんなケースでもすべての対応を義務とされているのでしょうか?
実は、そうではありません。
では、どういった場合に、何をすることが義務とされているのでしょうか?
ここでは、義務化されている内容について具体的に説明していきたいと思います。
犬と猫へのマイクロチップの装着の義務化
まずは、装着に関連している項目を列挙します。
1.犬猫等販売業者は、取得した犬又は猫にマイクロチップを装着しなければならない。
(動物愛護管理法 第39条の2 第1項)
・・・義務
2.令和4年5月31日以前に犬又は猫を所有する販売業者は、当該犬又は猫の子の譲渡しの日までに、当該犬又は猫にマイクロチップを装着し、環境大臣の登録を受けるよう努めなければならない。
(第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令 附則(令和4年4月5日環境省令第16号)第4条)
・・・努力義務(装着した場合には、登録は義務となります。(動物愛護管理法 第39条の5 第1項 第1号))
3.犬猫等販売業者以外の犬又は猫の所有者は、その所有する犬又は猫にマイクロチップを装着するよう努めなければならない。
(動物愛護管理法 第39条の2 第2項)
・・・努力義務
尚、装着に関連する内容で、下記のような規定もあります。
・犬又は猫に装着されているマイクロチップを取り外してはならない。
(動物愛護管理法 第39条の4)
・・・義務(禁止)
装着の期限については、下記の記事をご覧ください。
犬と猫へのマイクロチップの装着の義務化のポイント
装着についてポイントを整理すると、以下のとおりです。
〇犬猫等販売業者のみ
- 犬又は猫を取得したら装着させる義務がある。
- 令和4年5月31日以前に所有している犬又は猫への装着は、努力義務。
〇犬猫等販売業者以外のみ
- 所有する犬又は猫への装着は、努力義務。
〇犬猫等販売業者、犬猫等販売業者以外のどちらも
- (関連内容)犬又は猫に装着されているマイクロチップを取り外してはならない。
犬猫等販売業者は、令和4年6月1日以降に犬又は猫を取得したら装着する義務がありますが、犬猫等販売業者以外の場合は、令和4年6月1日以降にマイクロチップが装着されていない犬又は猫を譲り受けたとしても、装着は努力義務です。
この点が大きく違います。
努力義務というものがよくわからない、という方は、下記のリンクで解説をしていますので、是非ご覧ください。
犬と猫のマイクロチップの登録の義務化
「登録」だけでなく、「変更登録」、「届出」というものもあります。
これら関連している項目を列挙します。
1.所有する犬又は猫にマイクロチップを装着した者は、当該犬又は猫について、環境大臣の登録を受けなければならない。
(動物愛護管理法 第39条の5 第1項 第1号)
・・・義務
2.マイクロチップが装着されているものの、環境大臣の登録を受けていない犬又は猫を取得した犬猫等販売業者は、当該犬又は猫について、環境大臣の登録を受けなければならない。
(動物愛護管理法 第39条の5 第1項 第2号)
・・・義務
3.令和4年5月31日以前にマイクロチップが装着された犬又は猫を所有している犬猫等販売業者は、当該犬又は猫について、環境大臣の登録を受けなければならない。
(動物愛護管理法 附則(令和元年1月19日法律第39号) 第5条 第1項)
・・・義務
4.令和4年5月31日以前にマイクロチップが装着された犬又は猫の犬猫等販売業者以外の所有者は、当該犬又は猫について、環境大臣の登録を受けることができる。
(動物愛護管理法 附則(令和元年1月19日法律第39号) 第5条 第2項)
・・・任意
5.登録を受けた犬又は猫を取得した犬猫等販売業者は、変更登録を受けなければならない。
(動物愛護管理法 第39条の6 第1項 第1号)
・・・義務
6.犬猫等販売業者以外の者であって、登録を受けた犬又は猫を当該犬又は猫に係る登録証明書とともに譲り受けたものは、変更登録を受けなければならない。
(動物愛護管理法 第39条の6 第1項 第1号)
・・・義務
7.登録や変更登録を受けた者は、登録した内容(氏名、住所、電話番号、犬又は猫の所在地)等に変更があった場合には、その旨を環境大臣に届け出なければならない。
(動物愛護管理法 第39条の5 第8項、第39条の6 第2項)
・・・義務
8.登録を受けた犬又は猫の所有者は、その犬又は猫が死亡したときは、その旨を環境大臣に届け出なければならない。
(動物愛護管理法 第39条の8)
・・・義務
尚、装着や登録に関連する内容で、下記のような規定もあります。
・登録や変更登録を受けた犬又は猫の譲渡しは、当該犬又は猫に係る登録証明書とともにしなければならない。
(動物愛護管理法 第39条の5 第9項、第39条の6 第2項)
・・・義務
登録関連の各種期限については、下記の記事をご覧ください。
登録関連についてポイントを整理すると、以下のとおりです。
〇犬猫等販売業者のみ
- マイクロチップが装着されているものの、環境大臣の登録を受けていない犬又は猫を取得した場合は、登録する義務がある。
- 令和4年5月31日以前にマイクロチップが装着された犬又は猫は、登録の義務がある。
- 登録を受けた犬又は猫を取得した場合は、変更登録する義務がある。
〇犬猫等販売業者以外のみ
- 令和4年5月31日以前にマイクロチップが装着された犬又は猫は、登録は任意。
- 登録を受けた犬又は猫を、登録証明書とともに譲り受けた場合は、変更登録する義務がある。
〇犬猫等販売業者、犬猫等販売業者以外のどちらも
- マイクロチップを装着した場合には、登録する義務がある。
- 登録や変更登録した内容等に変更があった場合には、届出の義務がある。
- 登録を受けた犬又は猫が死亡した場合には、届出の義務がある。
- (関連内容)登録を受けた犬又は猫は、登録証明書とともに譲り渡す義務がある。
※注意:ここでの「登録」は、あくまで「環境大臣」の登録となります。
民間の登録をしていたとしても、登録が義務とされている場合には、「環境大臣」の登録が必須です。
犬猫等販売業者と犬猫等販売業者以外で細かい違いがありますが、登録等を行う事象が起きた場合は、基本的に義務となっています。
細かいところですが、犬猫等販売業者以外の場合は、マイクロチップが装着されているものの、環境大臣の登録を受けていない犬又は猫を取得したとしても、登録を義務とする規定はありません。
登録、変更登録、届出の方法
条文には、「環境大臣」の登録や届出等と書かれていますが、何のことかよくわからないと思います。
環境大臣は、指定登録機関に登録関係事務を行わせることができる、とされています。
(動物愛護管理法 第39条の10)
その指定登録機関が「犬と猫のマイクチップ情報登録」というサイトを運営していますので、そちらから作業を行うことが出来ます。
また、「登録」、「変更登録」、「届出」というように、対応する名称が違いますが、全て「犬と猫のマイクロチップ情報登録」というサイトから行うことが出来ますので、こと作業においては、それほど気にしなくても問題はないかと思います。
装着と登録の義務については、文字だけを羅列してしまいましたので、少しわかりづらいかと思います。
また改めて、表などにしてまとめたいと思います。
まとめ
上記をまとめると以下となります。
・犬と猫のマイクロチップ情報登録制度の目的は、離ればなれになったときに、所有者のもとへ戻る確率を高めることと、犬や猫を安易に捨てるなどの行為の抑止など。
・犬と猫のマイクロチップ情報登録制度とは、犬や猫にマイクロチップを装着し、装着したマイクロチップに記録されている識別番号と、所有者の情報を、指定登録機関で管理しているデータベースに登録する制度。
・犬と猫へのマイクロチップの装着や登録の義務化内容について、簡単にまとめると以下のとおり。
〇犬猫等販売業者
- 装着 :令和4年5月31日以前に所有する犬又は猫への装着は努力義務。左記以外に取得した場合は義務。
- 登録等:登録等を行う事象が起きた場合は義務。
〇犬猫等販売業者以外
- 装着 :所有している犬や猫への装着は努力義務。
- 登録等:令和4年5月31日以前に装着されている場合は、登録は任意。左記以外の場合で、登録等を行う事象が起きた場合は義務。
今回の記事では、何が義務とされているか、何が努力義務や任意とされているかを細かくまとめてみました。
こちらを確認すれば、義務とされていないケースも確認ができると思います。
努力義務とされている対応については、法律の趣旨を汲み取っていただくことはもちろん必要ですが、最終的には飼い主様のご判断になります。
内容をご理解していただいたうえで、対応する方法をご判断をしていただければ幸いです。