GビズIDを利用する申請では代行は不可?アカウントの第三者への開示や使用させることは不可?
最近は補助金申請や許認可申請等で、GビズIDを利用する場合があります。
以前、小規模事業者持続化補助金申請サポートを受ける意味はある?メリット、デメリットは?という記事でも、記載したとおり、小規模事業者持続化補助金申請の場合も、jGrantsを利用して申請する場合には、GビズIDアカウントを使用することになります。
このような補助金申請や許認可申請等は、第三者に代行依頼をしたい場合も多々あると思います。
GビズIDには、GビズIDが提供する委任機能というものがあり、こちらに対応した申請等の作業を委任する場合などは、こちらの機能を使うこととなるのですが、この委任機能を利用できない申請等も多々あるというのが実情です。
それでは、このように委任機能を利用できない申請の場合は、第三者による代行は不可なのでしょうか?
不可ではない場合には、どのように対応したらいいのでしょうか?
GビズIDアカウントの第三者への開示や第三者に使用させることは不可なのでしょうか?
こちらについて、利用規約に記載されている内容や、デジタル庁GビズIDヘルプデスクに問い合わせた内容をお伝えしたいと思います。
目次
GビズIDが提供する委任機能を利用できない場合は、第三者による代行は不可?
こちらについては、そういうわけではありません。
デジタル庁GビズIDヘルプデスクに問い合わせたところ、「Gビズにおいて委任が認められている手続きのほか、社会保険の手続きなどのように提出代行ができる手続きもございますので、申請先に一度ご相談をお願いします。」とのことでした。
ということで、Gビズにおいて委任が認められている手続き以外でも、申請先に相談して対応は可能ということですね。
まあ、今まで代行していたものを、GビズIDを利用することで、代行依頼できなくなるのであれば、作る意味も全くないですしね。
当たり前と言えば当たり前ですが、とりあえず一安心です。
GビズIDが提供する委任機能を利用できない申請等は、どのように代行対応をしたらいい?
GビズIDが提供する委任機能を利用できない申請等の場合に、第三者に代行をしてもらいたい場合、上記のヘルプデスクの回答のとおり、どのように対応するかは、申請先に確認するしかありません。
上記の社会保険の手続きなどのように、申請先が対応方法を取り決めていれば、その手順に従うだけです。
この場合は、申請者は何も気にしなくていいかと思います。
申請先が対応方法を取り決めていない場合は?
しかし、申請先がGビズID利用時の代行対応の方法を取り決めていない場合もあります。
申請先の事務局に確認しても、GビズIDが絡んだだけで、「GビズIDは、デジタル庁の管轄なので、デジタル庁に聞いて。」と突き放す事務局も多いです。
そういう場合には、どのように対応したらいいのでしょうか?
まず、申請先が、第三者による代行申請対応を不可としていないことの確認だけは必要です。
そして、その後の作業方法としては、以下のような方法が考えられると思います。
対応方法1.GビズIDアカウントのID、パスワード等を使用して、申請者がログインし、そのPC上でサポート業者が作業をする。
対応方法2.GビズIDアカウントのID、パスワード等を代行業者に渡して、サポート業者がログインして作業をする。(必要な場合は、二段階認証のパスワードを連絡する必要がある。)
上記対応方法1.の方法ですと、申請者とサポート業者の事務所の距離が近ければ、出向くことも容易かもしれませんが、作業の間は一緒に居なければいけないと思います。
もし、かなり距離がある場合であっても、申請者がログインし、作業はサポート業者がリモート操作をする、ということでも対応はできますが、上記の作業の間は一緒に居なければいけないということは同じですし、申請者もサポート業者も多少のPCに関する知識が必要です。
上記対応方法2.の方法であれば、双方ともに楽ではありますが、セキュリティ面に不安を覚えるかもしれません。
どちらの方法であっても、一長一短がありそうですので、どちらの方法も使えた方が都合がいいです。
では、こちらの2つの方法は、対応可能なのでしょうか?
GビズIDアカウントの第三者への開示や第三者に使用させることは不可?
上記対応方法1.に関しては、GビズIDアカウントの第三者使用と捉えられるかは、デジタル庁の考え方によるかもしれませんが、申請者のGビズIDアカウントのID、パスワード等の第三者への開示や第三者に使用させることを禁止されていないのであれば、申請先の事務局が対応方法を取り決めていない場合であっても、上記のどちらかの方法で代行作業対応は可能、といえると思います。
こちらに関する利用規約の確認結果と、デジタル庁GビズIDヘルプデスクの回答をまとめました。
まず、第三者への開示や第三者に使用させるなどを行うにあたり、以下のようなことを調べる必要があると思います。
1.第三者によってGビズIDアカウントのID、パスワード等を使用した場合、当該第三者は「サービスを利用できる者」の条件を満たせるのか?
2.第三者へのGビズIDアカウントのID、パスワード等の開示禁止条項や、第三者によるGビズIDアカウントのID、パスワード等の使用禁止条項があるのか?
3.その他、第三者の使用等に関する制限条項があるのか?
これらについて、順を追って説明していきたいと思います。
1.第三者によってGビズIDアカウントのID、パスワード等を使用した場合、当該第三者は「サービスを利用できる者」の条件を満たせるのか?
こちらについては、正直なところ、基本的に申請に利用するのは、申請者ですし、サポート業者はただの作業者ですから、関係ない話かな、と思っていたのですが、デジタル庁GビズIDヘルプデスクに問い合わせている際に、
「委任者と受任者にて契約の合意がある場合も、Gビズにて第三者が申請手続きを行うことについて
(本サービスを利用することができる者)
第3条 本サービスを利用することができる者は、法人番号を有し、かつ、法人番号等を公表することについて同意している企業等の代表者(以下「法人代表者」という。)若しくは個人事業主又はその従業員若しくは職員等であることを条件とします。
と規約にございますので、利用規約をよくお読みいただいたうえで、利用者様にてご判断をお願いいたします。」
との連絡がありました。
ということで、上記回答が「Gビズにて第三者が申請手続きを行うこと」についての回答であるため、こちらを見ていただいただけで、そもそも「禁止はしていない」ということはわかると思いますが、しっかりと第3条の内容を確認してみましょう。
この第3条は、上記のとおり、「本サービスを利用することができる者」について定義されています。
では、この「本サービス」の範囲は、どこからどこまでのことでしょうか?
利用規約には下記のように書かれています。
(本サービスの提供範囲)
第4条 本サービスは、アカウントの発行、管理及び認証に係る機能その他付随する機能を提供するものであり、ID対応行政サービスの提供は、当該ID対応行政サービスの提供者がそれぞれ定めるところにより行われます。
ということで、「アカウントの発行、管理及び認証に係る機能その他付随する機能を提供するもの」が、「本サービス(=GビズIDサービス)の提供範囲」ということですね。
「その他付随する機能」というものが、どこまでを指しているかは判断できませんが、少なくとも、第三者が「アカウントの・・・認証に係る機能」を利用する場合は、第三者は「本サービスを利用している」と判断される、ということですね。
アカウントのID及びパスワード等を利用して、ログインする場合等は、こちらに該当すると思われます。
以上より、対応方法1.については、ログイン自体は申請者ご自身で行うので、基本的には、第三者は本サービスの利用をしていない=上記の第3条の条件をクリアする必要はない、ということになりますが、「その他付随する機能」の内容が規定されていないため、クリアしておいた方が無難でしょう。
もちろん、対応方法2.の方法を取る場合は、第三者がログインをしていますので、第三者は、上記の第3条の条件をクリアできなければいけない、ということになります。
とはいえ、ログイン後に、ID対応行政サービスは利用することになるので、どちらの方法を取る場合であっても、ID対応行政サービスの条件はクリアする必要があります。
それでは、第3条の内容に戻ります。
こちらに記載されている「本サービスを利用することが出来る者」は、下記の3者と書かれています。
1 法人番号を有し、かつ、法人番号等を公表することについて同意している企業等の代表者
2 個人事業主
3 1や2の従業員もしくは職員等
ということで、上記に該当していれば「本サービスを利用することが出来る」ということだそうです。
上記3だけをみると、たしかに、「1や2の従業員もしくは職員等」なので、「同一組織内の者以外は利用できないのでは?」と思われるかもしれませんが、別に1や2に該当していたとしても、条件はクリアできます。
すなわち、申請者がAという個人事業主で、サポート業者がBという別の個人事業主であったとしても、Bは上記の2に該当するので、「利用することが出来る者」の条件を満たしている、ということとなります。
アカウントのID及びパスワード等自体について、同一組織内の者しか利用できないという規定もされていないため、アカウントのID及びパスワード等自体の第三者への開示や、第三者に使用させること自体について、直接制限している規定ではない、と解釈できます。
上記の認識で問題ないかをデジタル庁GビズIDヘルプデスクに確認したところ、「ご認識に相違ないと思われます」との回答を頂きました。
しかし、この第3条の規定の本来の目的は、新規アカウントを作ることが出来る者の条件の規定に見えます。
第三者への開示や、第三者に使用させることに対しても適用するには、無理があるような気もしてならないですが、そうであったとしても、大抵のサポート業者は事業で行っているはずですから、クリアはできていると思います。
2.第三者へのGビズIDアカウントのID、パスワード等の開示禁止条項や、第三者によるGビズIDアカウントのID、パスワード等の使用禁止条項があるのか?
利用規約の第10条に下記の記載があります。
(アカウントの管理義務)
第10条 利用者は、その利用するアカウントのID及びパスワード並びに二要素認証を行う場合にあっては当該認証に係る端末情報(以下「パスワード等」という。)の一切の管理義務を負うものとし、自己の責任の下に当該アカウントに係るパスワード等を管理し、みだりに他人にこれを開示し、又は使用させてはならないものとします。
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3 利用者は、ID又はパスワード等の紛失、不正使用、盗難等について一切の責任を負い、本サービス提供者はこれらの事由による利用者の損害について一切の責任を負わないものとします。
こちらの条項に関しては、ものづくり補助金や事業再構築補助金の公募要領に、細かい書き方は少し違うものの、下記のような記載があります。
本事業の申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。未取得の方は、速やかに利用登録を行ってください。本アカウントは、事業者情報の再入力の手間を省くため、補助金交付候補者の採択後の手続きにおいても利用します。本アカウント及びパスワードを外部支援者等の第三者に開示することは、GビズIDの利用規約第10条に反する行為であり、トラブルの原因となり得ますので、ご注意ください。
このように書かれているので、上記のような記載がある補助金の場合は、この記載を無視して対応方法2.を行うのはやめておいた方が無難です。
それはさておき、本当にどのような場合であってもGビズIDは第三者への開示はGビズIDの利用規約第10条に反しているのでしょうか?
こちらについて、再度利用規約を確認してみましょう。
たしかに、「他人にこれを開示し、又は使用させてはならない」と書かれていますが、よく見てみると、「みだりに他人にこれを開示し、又は使用させてはならないものとします。」と書かれています。
「みだりに」開示や使用させてはいけない、とされていますが、開示や使用させることを一切禁止しているわけではありません。
このため、信頼できる特定のサポート業者と代行の契約をして、サポート業者に開示や使用させることは、「みだりに」サポート業者に開示するわけでもなく、「みだりに」サポート業者に使用させるわけではないので、こちらの条項には反していないと解釈できます。
上記の認識で問題ないかをデジタル庁GビズIDヘルプデスクに確認したところ、「ご認識に相違ないと思われます」との回答を頂きました。
というか、こちらの条項では、「アカウントの管理義務」の話ですので、しっかりと管理して、と言っているだけであり、第10条第3項にあるとおり、しっかりと管理しなかった場合は、何かあったとしても自己責任ですよ、といっているだけです。
別にある禁止事項の条項に列挙されているわけでもないです。
とはいえ、公募要領に記載されている場合は守りましょう。
上記のとおり、トラブルの原因になる恐れはありますので。
3.その他、第三者の使用等に関する制限条項があるのか?
その他で関係する可能性があるかを確認したところ、下記の条項が関連する可能性が、一応あります。
(知的財産権)
第16条 本サービス提供者が利用者に対して提供する一切のプログラムその他の著作物(本利用規約、利用者向けのマニュアル等を含む。)に関する著作者人格権及び著作権並びにそれに含まれるノウハウ等の知的財産権は、すべて、本サービス提供者に帰属し、利用者には帰属しないものとします。
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(3) 営利目的の有無にかかわらず、第三者に貸与し、譲渡し、又は担保の設定をしないこと。
こちらは、知的財産権の保護規定ですし、そもそもパスワードなどは、著作権法が保護する著作物ではない場合が多いと思われます。
このため、アカウントのID及びパスワード等の第三者使用を制限する規定ではないだろう、と解釈できます。
上記の認識で問題ないかをデジタル庁GビズIDヘルプデスクに確認したところ、「ご認識に相違ないと思われます」との回答を頂きました。
GビズIDアカウントの第三者への開示や第三者に使用させる場合に関して
利用規約にも書いてあるとおりですが、デジタル庁GビズIDヘルプデスクからも、全てにおいて「ご利用にあたっては、利用者様にてID又はパスワード等の紛失、不正使用、盗難等について一切の責任を負い、デジタル庁はこれらの事由による利用者の損害について一切の責任を負いませんので、自己管理の上、運用お願いします。」との話もありました。
要するに、「適切な範囲であれば、第三者にアカウントを開示し、使用させることはできるけど、なにかあっても自己責任。」ということです。
何かが起きて揉めたとしても、当事者同士で解決するしかありません。
以上より、上記の対応方法1.でも、対応方法2.でも、GビズID側としては、禁止はしていない、ということとなります。
第三者にアカウントを開示し、使用させることを一切禁止とするなら、そういった条項を書いておけばいいだけですが、そのようにはされていません。
そんな条項を書いてしまうと、パソコン作業が出来ない方や、不得意な方などを、全て置き去りにすることになります。
それこそ、デジタル庁等が掲げている「誰一人取り残されないデジタル化」の理念に反していると思うので、そんなことは気軽に書くことはできないでしょうし、そんな回答もできないのではないかと思われます。
GビズIDを使用する場合の、第三者による申請代行対応方法のまとめ
GビズIDを使用する場合の、第三者による申請代行対応方法をまとめると、以下となります。
条件 | 対応方法 | |
---|---|---|
gBizIDサイトの委任機能あり | gBizIDサイトと、申請先の案内に沿って作業をする | |
gBizIDサイトの委任機能なし | 申請先が代行対応方法を決めている | 申請先の案内に沿って作業をする |
gBizIDサイトの委任機能なし | 申請先が代行対応方法を決めていない | 手順1 提出先の事務局が、第三者による代行申請対応を不可としていないことを確認する。 手順2 ※ 以下のいずれかのような方法を取る。 1.GビズIDアカウントのID、パスワード等を使用して、申請者がログインし、そのPCでサポート業者が作業をする。 2.GビズIDアカウントのID、パスワード等を代行業者に渡して、サポート業者がログインして作業をする。 ※ 申請先が許可していない対応は行わない。 |
尚、GビズIDには、gBizIDプライム、gBizIDメンバー、gBizIDエントリーと3種類のアカウントがありますが、全て同様です。
まとめ
今回は、GビズIDで委任機能が使えない場合に、第三者による代行ができるかどうか、及び各種対応方法について解説しました。
まとめると以下のとおりです。
・GビズIDが提供する委任機能を利用できない場合でも、第三者による代行は可能。(ただし、申請先が代行を許可している場合。)
・GビズIDが提供する委任機能を利用できない場合の対応方法は、申請先に確認が必要。
・GビズIDアカウントは、みだりに第三者への開示や第三者に使用させてはいけないが、その一切が禁止とされているわけではない。但し、何かあった場合には自己責任。(あくまでGビズIDのみの話。ID対応行政サービス側が禁止している場合は別。)
GビズIDって便利ですけど、説明が足りていないので、逆に「めんどくさそう・・・」と思われて、敬遠されている方もいらっしゃる気もします。
そのような方も、今回の記事の内容を見ていただき、GビズIDを使用する場合でも代行申請は依頼できる、ということをご理解していただけたら幸いです。
パソコンに強いサポート業者であれば、GビズIDを利用することで、スムーズに作業ができると思います。
(というか、GビズIDを利用しないと減点するという補助金や、そもそも申請できない補助金も有るので、利用せざるを得ないわけですが・・・。)
また、上記まででご説明したとおり、GビズIDを使用する場合、申請先によっては、第三者にアカウント等を使用させたり、第三者にパソコンを操作してもらったりをしなければいけない場合もあります。
どちらの方法もリスクが伴うと思います。
GビズIDって登録時に実印を登録するので、デジタル上の実印みたいなものですよね。
そんな大事なものですので、やはり気軽に第三者に使用させるということは、お勧めできませんし、こちらは利用規約にも反しています。
何の連絡もなく、サポート業者にGビズIDアカウントの取り扱いを指定されるというのも、少し不安があると思うので、この件については、サポート業者と話をして、納得した対応方法とされたほうがいいと思います。
もちろん、私ども行政書士等の士業は、守秘義務がありますので、みだりに情報を漏らすこともしませんし、行政書士に関しては、職務上の権限を目的外で行使してはならないこととされていますので、どのような対応であっても、ご安心いただけるかと存じます。
とはいえ、信頼できるサポート業者に頼むのが一番安心ですよね。
特に周りに信頼できそうなサポート見つからないという場合は、ぜひぜひ弊所にご相談ください。
今回の記事が、GビズIDのご理解に少しでも役に立てば幸いです。